USBの進化の歴史を紐解くカギ!e-Marker(イーマーカー)との関係を解説
パソコンの普及にはじまり、スマートフォンやタブレットなどさまざまな電子機器に利用されているUSB。「USB Type-A」から「USB Type-C」まで、規格もより使いやすく・より便利に進化を遂げています。
これらの規格を詳しく調べていくと「e-Marker(イーマーカー)」という言葉がしばしば見受けられます。e-Markerとはどんな電子技術で、USBとどのように関わっているのでしょうか。
そこで今回は、e-Markerの概要や役割、USBとの関係性について解説します。
そもそもUSBとは?
e-Marker(イーマーカー)って何?
e-Marker(イーマーカー)ってどんな風に使われるの?
e-Markerが内蔵され、USB PDにも適応するType-Cのメリットとは?
そもそもUSBとは?
USBとは?
USBは「Universal Serial Bus(ユニバーサル・シリアル・バス)」の略称です。パソコンやスマートフォン、タブレットなどの電子機器に幅広く使用されています。
USBをひとことで表現すると「電子端末に周辺機器を接続する規格」と言えます。「Universal(ユニバーサル)」という言葉が表すように、統一規格として登場し様々な種類の電子機器に搭載されました。USBにより電子機器と周辺機器の互換性や利便性は著しく向上しました。
USBは、主に電力供給やデータ転送に役立てられています。電力供給では、AC充電器を用いた供給のほか、パソコンを電力源として利用することにも使用可能です。データ転送では、速度が規格化されている上に互換が保証されているため、製造年月に差がある機器同士でも容易に繋げられます。
USB PDとは?
USB PDは「USB Power Delivery」の略称で、Type-C端子に適応する給電規格のひとつです。最大240Wまでの電力を供給することができ、従来の「USB 2.0」では最大2.5W、「USB 3.0」では最大4.5Wの電力供給であったことを考えると、大容量の電力に対応することが分かります。ノートパソコンなど消費電力が大きい電子機器にも、安定した電力供給が可能です。
また、大容量の電力供給は、急速充電を実現します。USB PDに対応した充電器は電流と電圧を自動調整することができるので、効率的な充電を可能にするのです。ただし、充電するデバイスの対応W数などによっては最大電力が変動するためご注意ください。
e-Marker(イーマーカー)って何?
e-MarkerはType-Cケーブルに搭載されるICチップ
e-Markerは、USB規格のひとつである「Type-Cケーブル」のコネクタ部分に搭載されるICチップです。e-Markerが搭載されたケーブルを「E-Markedケーブル」あるいは「EMC(Electrical Marked Cable)」と呼ぶこともあります。e-Markerは、USB3.x以上またはUSB Power Delivery 60Wを超えるType-Cケーブルに搭載されます。
一方、USB2.0やUSB Power Delivery 60WのType-Cケーブルにe-Markerを搭載することは必須ではありません。全てのType-Cケーブルにe-Markerが搭載されているわけではないので、ご注意ください。
e-Markerが搭載されているかどうかは、ケーブルの外観からある程度予測することができます。例えば、ICチップを搭載するためにコネクタ部分がやや長い形状をしていたり、強い電力に対応するためにケーブルがやや太かったりする場合はe-Markerが搭載されている可能性が高いです。
e-Marker(イーマーカー)にはどんなことが書かれているの?
e-MarkerのICチップには「対応するUSB規格(USB2.0・USB3.x・USB4など)」「対応する電圧・電流」「製造者情報」「ケーブル長」などの情報が登録されています。
接続元機器や接続元機器はe-Mkaerの情報を元に自動的に調整することで、適切なデータ通信や電力供給を行っています。
これらの情報をUSB PDに対応した充電器が受け取ることで、適切な電流・電圧を送ることが可能です。ケーブルの許容範囲を超えた電力が供給されることはないため、電子機器の故障を防ぎ、安全な充電を行うことができるのです。
画像はUSB2.0 240Wケーブルのe-Makerの記載内容の例です。
e-Makerを読むことができる機器(USBテスター)は、数千円で入手することができます。
(USBテスターで下記の画像のような情報を読み取ることができます。)
USBテスターを使用してe-Makerを読む時は、USBの最新の規格に対応しているか注意してください。
古いUSB規格にしか対応していないUSBテスターでは、最新のe-Makerを読むことは出来ません。
例:USB4EPRに対応していないUSBテスターを使ってe-Makerを確認すると、画像の情報を読み取っても20V@5A(100W)と表示されてしまいます
FW(ファームウェア)の更新に対応した機器であれば、FW更新を行うことで最新の規格に対応できる場合があります。
ここからは、ケーブル接続から充電開始までの流れについて確認していきましょう。
e-Marker(イーマーカー)ってどんな風に使われるの?
e-Marker(イーマーカー)の搭載によってケーブル情報が登録されることで、正しいデータ通信、電力供給ができるようになります。特に電力供給に関しては、ケーブルの仕様を超えた電力が送られることがなくなり、安全に使用できます。
また、安心して使用できるからこそ、e-Markerが内蔵されたType-Cケーブルは急速充電などハイレベルな電力供給を可能にしています。急速充電には「USB PD」という規格の充電器を併用する場合が多いです。
e-Marker搭載のケーブルを接続し、充電が開始されるまでの流れとは?
e-Markerが内蔵されているType-CケーブルをUSB PDに対応した充電器に接続すると、まず充電器からケーブル仕様、接続先機器の使用の問い合わせが行われます。すると、e-MarkerのICチップと接続機器から対応電圧や電流、USBの仕様といった情報が充電器に共有されます。それらの情報をもとに、充電器が最適な電流・電圧を調整して送ることで、効率の良いデバイスの充電がはじまるのです。
例えば、e-Markerが搭載されたType-Cケーブルの最大電力が60W、USBPDに対応した充電器の最大電力が100W、充電を行うデバイスの最大電力が100Wであったとします。この場合、充電器はe-Markerからケーブルの最大電力が60Wであることを読み取り、ケーブルに合わせて60Wの電力をデバイスに送ります。
送電側(充電器)と受電側(デバイス)が共に最大100Wの電力に対応していたとしても、それらを繫ぐケーブルの仕様によっては電力が制限される仕組みとなっているのです。ケーブルの許容範囲を超えず、安全に充電を行う技術は、これまでのUSB開発の進化の歴史と言えるでしょう。
e-Markerが内蔵され、USB PDにも適応するType-Cのメリットとは?
e-Markerという最新技術が搭載され、急速充電を可能にするUSB PDに適応した「USB Type-C」は、近年さまざまな電子機器に使用される規格となりました。「USB Type-A」や「USB Type-B」に次ぐ新規格として誕生し、入力・出力のどちらにも利用することが可能です。
Type-Cの大きな特徴は、上下左右の区別がないストレスフリーな端子形状にあります。従来のUSB規格には端子に挿入向きがあったため、Type-Cが発売された当初は「画期的な形状である」と話題になりました。
また、Type-CはさまざまなUSBポートと互換性を持ち、電源供給はもちろん映像出力も1本のケーブルで完結するメリットがあります。長年独自の「Lightningケーブル」を搭載してきたApple社も、2023年の「iPhone15シリーズ」よりType-Cに適応するモデルを発売しました。e-Makerが搭載されたType-Cはこれからの電子機器のインタフェースとして中心になっていくでしょう。
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