PPS(Programmable Power Supply)とはどんな規格?USB PDとはどう違うの?
スマートフォンやタブレットなど、年齢・性別を問わず誰もがデバイスを使用し、そして持ち歩く時代となりました。これらの端末は電話機能だけではなく、SNSやカメラ、ゲームなど幅広いツールとして機能しています。
一方、外出先でデバイスを使用する際「充電残量が気になる」という方も多いのではないでしょうか。特に、動画やゲームを目的として端末を使用すると、多くの電力を消費してしまいます。最近では、カフェやコンビニの休憩スペースにも電源が設置され、気軽に充電できる環境が整ってきましたが、お昼休憩などの短時間ではデバイスをフル充電することは難しいでしょう。
そこで、近年注目を集めているのが急速充電に対応した充電器です。これらの充電器には高速充電に対応した規格が使用されており、充電速度に影響を与えています。今回は、高速充電に関する規格「USB PD」や、より最新の技術「PPS」について確認していきましょう。
USB PDとは?どんな特徴があるの?
PPSとは?何が改善されたの?
PPSやUSB PDは、今後どうなっていくのか?
USB PDとは?どんな特徴があるの?
USB PDは「USB Power Delivery」の略称で、USB(Universal Serial Bus)規格の一種です。はじめに、USB PDの特徴や注意点について確認していきます。
電力の供給能力が向上
従来のUSB充電器では、一定の電流・電圧によって端末への電力供給を行っていました。一方、USB PDに対応している充電器は、接続された端末と情報を交換することにより、適切な電圧・電流を送ることが可能です。
このように、電力の供給能力が向上したことで効率的な充電が可能となりました。最適な電圧・電流を供給することで高速な充電を実現しているのです。
充電速度が大幅にアップ
USB PDの大きな特徴は、デバイス間の充電や電力供給を効率的に、そして高速に行うことができる点です。スマートフォンやタブレットだけではなく、MacBookなどのノートパソコンにも幅広く採用されています。
従来のUSB充電器では、USB2.0規格の場合は最大2.5W、USB3.0規格の場合は最大4.5Wの電力を供給することができました。一方、USB PDは最大240Wという高い電力を供給することができます。従来のUSB充電器と比較して数倍の速度で充電が可能です。
USB Type-Cケーブルに対応
USB PDを利用するには「USB Type-C」というUSBコネクタを使用する必要があります。Type-CはUSB規格の中で最も新しいコネクタであり、裏表のないリバーシブルな形状が大きな特徴です。
最近では、幅広いデバイスにType-Cが搭載されており、結果としてさまざまなデバイスがUSB PD対応の充電器を使用することができます。
従来、独自のLightningコネクタを採用していたApple社も、2023年の「iPhone15シリーズ」からType-Cコネクタを採用しています。
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急速充電には全ての接続機器がPD対応であることが必要
USB PDという規格は私たちの生活をより豊かにしてくれていますが、対応する充電器を持っていればUSB PDが使用できるとは限りません。USB PDを使用するためには、全ての接続機器がUSB PDに対応している必要があります。
例えば、スマートフォンを充電する場合、USB PD対応の充電器の他にスマホ本体やType-CケーブルもUSB PDに対応している必要があります。どれかひとつでもUSB PD非対応の機器があれば、USB PDを使用することができないためご注意ください。
USB PDとは??という方は「急速充電ができるUSB PD(パワーデリバリー)とは?」をご覧ください。
PPSとは?何が改善されたの?
PPSは「Programmable Power Supply」の略称で、USB PDの拡張機能として誕生した規格です。USB PDは何度か改訂が行われているのですが、PPSは「Revision3.0 Version1.1」で新たに登場しました。
PPSを直訳すると「プログラムが可能な電源」と表されます。PPS機能の新たな特徴を確認していきましょう。
電流・電圧を小刻みに変えることが可能
通常のUSB PDに対応した充電器では、数種類の電圧(例えば 5V / 9V / 12V / 15V / 20V など)の中から選択して供給を行います。USB PDでは、充電器の最大供給量あるいは機器の最大受電量で電力を送り続けるため、電力がやや過剰に発生してしまいます。
一方、PPSは電力供給の際に電流・電圧を小刻みに変えることが可能です。求められる範囲内で電力を細かく切り替えられるので、より最適な状態で受電できるようになりました。
デバイスの発熱が削減され、バッテリーの寿命が延びる
充電時、必要以上に電力が送られるとデバイスには無駄な熱が発生します。ある程度の発熱は仕方がありませんが、熱は端末に内蔵されているバッテリーに負荷をかけるため、機器の寿命を縮めてしまう恐れがあるのです。
一方、PPSは最適な電力供給が行えることで、バッテリーの負荷を最小限に留めることが可能です。バッテリーの寿命が延び、結果としてデバイスをより長く使用することができるようになるでしょう。
充電時にどうして熱が発生するの?
デバイスを充電する際、熱が発生する現象には3つの要素が関係しています。ひとつめは「DC-DCコンバータ」という、USB充電器から供給された電圧を端末の電圧に変換する電子回路で、端末に電圧を加える役割を果たしています。ふたつめは「バッテリー充電回路」という電子回路で、バッテリーの状態に合わせて適切な充電をコントロールする役割を果たしています。そして最後は「バッテリー」そのものが関係しており、内部抵抗から化学反応が起こることで熱が発生します。
従来のUSB充電器では、これら全ての要素が関わり、デバイスが熱くなっていました。PPSでは、デバイス側が自身の温度を監視しながら細かく電圧・電流の設定を変更し充電器に対して電圧・電流要求を行います。PPS機能を搭載したUSB PD充電器は、デバイスの要求に合わせた状態で供給するため、デバイスの温度上昇を抑え、バッテリーの長寿命化が期待できるようになったのです。
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PPSやUSB PDは、今後どうなっていくのか?
USB PDは供給能力や充電速度が向上した規格であり、そのオプション機能としてPPSが誕生したということが分かりました。現在、USB PD自体は私たちの生活に根付きはじめており、あらゆる機器がUSB PDで充電できます。「USB PDに対応するType-Cケーブルを持っていれば十分」という、便利な時代はすぐそこまで来ているのかもしれません。
ただし、PPSに対応する機器はまだそれほど多くはなく、USB PDに対応した一部の充電器にPPS機能が搭載されているのが現状です。今まさに、PPS機能を導入すべく製品開発が行われている段階と言えるでしょう。
普及まであと一歩、PPS対応かどうかを確認してみよう
PPSはパワーや安全性、効率性などさまざまな能力が備わった、将来性の高い規格です。PPSが登場した当初はUSB PDに対応した充電器もあまり知られていませんでしたが、現在は多くの人が急速充電を求めてUSB PD充電器を使用しています。最新モデルではPPS機能が搭載されたUSB PD充電器も数々発売されており、普及まであと一歩というところです。
充電器以外の機器については対応していない製品も多いですが、5Gの登場やバッテリーの大容量化に伴いPPSの需要は高まっています。今後ますます効率の良さが重要視され、PPSの開発は進んでいくでしょう。充電時の発熱を制御できるので、放熱機能の小型化ができ機器の小型・軽量化が期待できます。
USB PDにおける環境を整える際には、それぞれの機器に「PPS機能が備わっているかどうか」を確認してみると良いでしょう。製品本体にはPPS対応の可否が明記されていないかもしれませんが、パッケージや商品内容、取扱説明書などを注視することで詳細が分かります。
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